「せっかく高いバッグを買うなら、値落ちしにくいブランドを選びたい」
ブランドバッグを迎える前に、そんな気持ちになるのは自然なことです。
私自身、百貨店の特選ブランド売場に18年間立ち、お客様がデザインと価格の間で迷う姿を何度も拝見してきました。
しかし、販売価格が高いバッグと、手放すときに価値が残るバッグは同じではありません。
資産価値を決めるのはブランド名だけでなく、モデル、サイズ、色、状態、そして次の買い手を見つけやすいかどうかです。
この記事では、公開された再販データを基に値落ちしにくいブランドを順位づけし、同じブランドの中で差がつく選び方と保管法まで解説します。
ごきげんよう、「クローゼットの資産価値手帳」筆者の白石麗子です。
目次
結論。値落ちしにくさの筆頭はエルメス、次がゴヤール
結論から申し上げると、値落ちしにくさの筆頭はエルメス、次がゴヤールです。
3位のザ・ロウまでが定価に近い再販価値を保ち、シャネルとルイ・ヴィトンが7割台後半で続きます。
ランキングの基礎にしたのは、米国の高級品再販事業者Rebagが公開した2025年版Clair Reportです。
同社が扱う一次・二次市場の数百万件のデータから算出した「平均再販価値÷小売価格」を使い、日本で資産価値を検討されやすいラグジュアリーブランドのうち、資料上の数値を確認できた7ブランドを並べました。
| 順位 | ブランド | 平均再販価値の目安 | 代表的なモデル | 見方 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | エルメス | 138% | バーキン、ケリー、コンスタンス | 一部モデルは小売価格超え |
| 2位 | ゴヤール | 132% | サン・ルイ、ルエット、プルメ | 定番キャンバスに強い需要 |
| 3位 | ザ・ロウ | 97% | マルゴー、N/Sパークトート | 急伸中だが長期実績は短い |
| 4位 | シャネル | 7割台後半 | クラシックフラップ、11.12 | 定番型と価格改定が下支え |
| 5位 | ルイ・ヴィトン | 7割台後半 | スピーディ、ネヴァーフル | 定番型と限定品で差が出る |
| 6位 | クリスチャン・ディオール | 6割台半ば | レディ ディオール | 色とサイズの選択が影響 |
| 7位 | ロエベ | 6割台半ば | パズル | 流行型と定番型を分けて見る |
調査日は2026年8月20日で、表の数値は日本の店頭買取率ではありません。
為替、販売手数料、買取店の流通費、品物の状態が差し引かれるため、持ち主が受け取る金額は表の割合より低くなります。
なお、同資料の図には別価格帯のTelfarも12割台で掲載されていますが、今回は日本で比較対象になりやすいラグジュアリーメゾンに絞りました。
Miu Miuは本文と図の数値が一致しないため順位から除外し、ゴヤールは概要と図に示された132%を採用していますが、別ページには123%との記載もあります。
きれいな数字ほど、前提を見落とさないこと。
ランキングを見る前に知りたい「資産価値」の3要素
バッグの資産価値は、売却額だけでは測れません。
私は「価格保持率」「売りやすさ」「価格の安定性」の3つに分けて見ています。
価格保持率
価格保持率は、小売価格に対して中古市場でどれだけ価値が残っているかを示す物差しです。
たとえば小売価格100万円のバッグに再販価値80万円が付けば、保持率は80%になりますが、これは再販事業者が観測した市場価値であり、持ち主の手取り80万円を約束する数字ではありません。
また、現在の定価を分母にするのか、購入当時の価格を分母にするのかでも結果は変わります。
値上げを重ねたブランドでは、中古価格が上がっていても現行定価比が低く見えるため、「購入額より増えたか」と「現在の定価をどれだけ保ったか」は別の問いなのです。
売りやすさ
高い査定額が付いても、買い手が少なければ現金化まで時間がかかります。
バーキン、スピーディ、クラシックフラップのように型名で探され続けるモデルは、買取店が次の販売価格を見積もりやすく、査定先も選びやすいのが強みです。
米国のリユース企業The RealRealの2025年版Resale Reportでは、新品購入前に再販価値を考慮する回答者が47%でした。
次に売れるかを見て買う姿勢は、すでに一部の愛好家だけのものではありません。
価格の安定性
限定色が一時的に高騰しても、話題が去った後に相場が急落すれば、資産としては扱いにくいものです。
10年、20年と同じ名前で続く定番は過去の取引が多く、年式や状態の違いを比較しやすいため、売り手も買い手も価格の目線を合わせやすくなります。
ここで見るべきは「最高値」ではなく「再現性」です。
通常素材、定番色、人気サイズの相場を基準にすれば、珍しい一品の落札記録に判断を引っ張られません。
1位エルメス、2位ゴヤールが突出する理由
1位 エルメス
エルメスの平均再販価値は138%で、7ブランドの中では明確な首位です。
モデル別ではケリー・ミニIIが282%、バーキン・セリエが183%、コンスタンスが137%、ケリーが130%、バーキンが122%とされ、ブランド平均だけでなく複数の定番が小売価格を上回りました。
この強さを支えるのは、世界的な認知、長く変わらない型、技能を持つ職人による供給、そして店頭で希望品を自由に選びにくい販売環境です。
欲しい人の数に対して良好な個体が限られるため、中古市場が単なる「安く買う場所」ではなく、色やサイズを選んで早く入手する市場として機能します。
ただし、エルメスなら何でも同じではありません。
サザビーズのバーキンの価格要因に関する解説では、2025年に扱ったバーキン30の平均価格は約2万2,300ドルである一方、角擦れや金具傷など明確な使用感のある個体は、傷のない個体より30%以上安くなるとしています。
ブランドの力が強くても、状態差は消えません。
2位 ゴヤール
ゴヤールの平均再販価値は132%で、エルメスに続きます。
モデル別ではルエットが191%、サン・ルイが173%、プルメが137%となり、軽量なキャンバスバッグが強い結果を残しました。
サン・ルイは形を見ただけでブランドが分かり、軽く、サイズ展開も明快です。
長く続く定番に対して世界各地から需要が集まる一方、販売網が広がりすぎていないことが、中古品の選択価値を高めています。
The RealRealの別指標でも、2025年のサン・ルイは再販価値が前年比18%上昇しました。
ただし、これは前年からの伸び率であり、132%という小売価格に対する保持率と足し算はできません。
数字の種類を混ぜないだけで、ランキングの見え方はずっと正確になります。
3位から5位。ザ・ロウ、シャネル、ルイ・ヴィトン
3位 ザ・ロウ
ザ・ロウは平均97%まで上がり、老舗メゾンを上回りました。
モデル別ではN/Sパークトートが146%、マルゴーが107%で、ロゴを前面に出さない「クワイエット・ラグジュアリー」の需要が数字に表れています。
一方、資産価値の歴史はエルメスやシャネルほど長くありません。
人気が急上昇している時期の97%と、何度も景気や流行の波を越えた97%は同じではないため、ザ・ロウは上昇力を評価しつつ、相場の安定性を分けて見るブランドです。
4位 シャネル
シャネルは7割台後半ですが、クラシックフラップや11.12のように、ひと目で型を判別できる定番を持っています。
2025年のモデル別データでは、シャネル25ホーボーが102%、シャネル31ショッピングバッグが92%となり、新しいモデルにも定価に近い評価が付きました。
シャネルの強みは、定番のデザインコードが途切れず、ヴィンテージにも買い手がいることです。
とはいえ、ラムスキンの擦れ、チェーンや金具の傷、内側のべたつきは目につきやすく、同じクラシック系でも状態で査定が割れます。
5位 ルイ・ヴィトン
ルイ・ヴィトンは7割台後半で、シャネルとほぼ並びます。
スピーディ、ネヴァーフル、アルマなど、世代を越えて名前が通じるモデルが多く、国内で査定窓口を見つけやすい点まで含めると、売りやすさは上位です。
The RealRealの調査では、2025年のスピーディの再販価値が前年比13%上昇しました。
一方で、Rebagの2025年データで小売価格超えが並んだのは村上隆との復刻コラボであり、その勢いを通常ライン全体へ広げて考えるのは禁物です。
通常品、廃番品、限定品。
ここを分けて相場を見ます。
6位と7位。ディオール、ロエベはモデル選びで差が出る
6位 クリスチャン・ディオール
クリスチャン・ディオールの平均は6割台半ばです。
レディ ディオールはカナージュとチャームで型を判別しやすく、長く同じ名前で探されているため、ブランド平均よりモデル単位で見るべき一品です。
定番でも、華やかなシーズン色や刺繍は買い手の好みが分かれます。
資産価値を優先するなら、日常の服に合わせやすい色、需要の厚いサイズ、傷を管理しやすい素材の順で候補を絞ります。
7位 ロエベ
ロエベも平均は6割台半ばです。
代表作のパズルは輪郭を見てモデル名が分かり、革の品質やつくりの良さだけでなく、中古市場で型名を検索しやすい強みがあります。
ただし、同じパズルでも初期型、エッジ、折り構造を変えたモデル、サイズ違いが並びます。
購入時は「ロエベだから」で止めず、正式な型名とサイズまで中古市場で検索します。
セリーヌは約5割。定番モデルは別に見る
セリーヌのブランド平均は約5割でしたが、この数字だけで候補から外す必要はありません。
トリオンフやラゲージのように型名が定着したモデルと、シーズン性の強いモデルを一緒に平均すると、個別の残価は見えにくくなります。
ここまでの順位は「好きなバッグの順位」ではありません。
毎日使う満足が高いなら、保持率が10ポイント低くても、その差を十分に回収できます。
同じブランドでも査定が変わる6つの条件
ブランド平均は入口にすぎません。
実物の査定では、次の6条件が重なって価格が決まります。
| 条件 | 価値が残りやすい選択 | 査定を下げやすい要素 |
|---|---|---|
| モデル | 長期定番で型名が通じる | シーズン性が強く流通実績が少ない |
| サイズ | 現在の需要が厚い小型から中型 | 重く用途が限られる大型 |
| 色 | 黒、茶、グレージュなど定番色 | 合わせる服を選ぶ特殊色 |
| 素材 | 丈夫で補修履歴を管理しやすい素材 | 水分や擦れが目立ちやすい素材 |
| 状態と修理歴 | 角、持ち手、内側、金具が良好 | におい、型崩れ、社外修理、色補修 |
| 付属品 | 箱、保存袋、レシート、ストラップが揃う | 付属品の欠品や別商品の混在 |
エルメスについてサザビーズが挙げる主要因も、状態、サイズ、素材、色、製造年です。
とくに状態は最初に見られるため、人気色を選んでも角を強く擦れば、色による有利さは簡単に失われます。
修理にも注意が要ります。
見た目がきれいになっても、正規外の塗装やパーツ交換は査定時に説明を求められるため、売却を視野に入れるなら、修理前の写真と明細を残し、まず正規窓口へ相談するのが順序です。
目的別に選ぶなら、このブランド
ランキングをそのまま買い物リストにするより、自分が何を優先するかで候補を分けた方が失敗しません。
- 価格保持率を最優先するなら、エルメスの定番モデルを状態と付属品まで確認して選ぶ
- 軽さと高い保持率を両立するなら、ゴヤールのサン・ルイなど流通実績のある型を見る
- 上昇中のデザインを楽しむなら、ザ・ロウを長期安定とは分けて検討する
- 日常使いと売りやすさを両立するなら、シャネルかルイ・ヴィトンの定番型を選ぶ
- デザインを優先しながら残価も意識するなら、ディオールやロエベをモデル単位で比べる
購入前には、欲しい型名を「新品同様」「使用感あり」の二つの状態で検索してみましょう。
両者の価格差が大きければ、気兼ねなく毎日使うバッグなのか、状態を管理して残価を守るバッグなのかを先に決められます。
バッグの資産価値を落とさない保管と使い方
値落ちを防ぐ保管は、しまい込むことではありません。
形を保ち、湿気を逃がし、金具と革が触れ続けない状態をつくることです。
クリスティーズのハンドバッグ保管ガイドでは、箱、薄紙、レシートを一緒に残すことが再販時に有利だと説明しています。
中へ中性紙を詰め、金具を包み、通気性のある保存袋に入れる一方、ハンドルを吊るす保管は変形につながるため避けます。
- バッグの中へ色移りしない薄紙を軽く詰める
- チェーンや金具が革へ当たらないよう薄紙で包む
- 通気性のある保存袋へ入れ、直射日光と高湿度を避ける
- ハンドルをフックに掛けず、底面を水平に置く
- 箱、レシート、カード、替えストラップを同じ場所で保管する
- 香水、化粧品、ハンドクリームが乾く前には触れない
箱へ密閉したままにすると、湿気やにおいの変化を見逃します。
月に一度は扉を開け、季節の変わり目にはバッグを取り出して、角、持ち手、内側、金具の順に確認します。
売り時は「使っていない期間」と相場で決める
バッグの売り時は、最高値を当てる日ではなく、劣化が進む前に次の持ち主へ渡せる時です。
私は「1年間出番がない」「同じ用途のバッグが2個以上ある」「角や内側に劣化の兆候が出た」のどれかに当てはまれば、一度査定を取る基準にしています。
査定では、同じ日に2社以上へ同じ写真と付属品情報を送り、提示額だけでなく手数料、送料、キャンセル時の返送料まで比べます。
委託販売は表示価格が高くても入金まで時間がかかり、買取は早く現金化できる代わりに事業者の流通費が差し引かれるため、「いくらで売れるか」より「いつ、いくら受け取れるか」で比較するのです。
売るか迷うバッグは、査定額を知ってから戻しても構いません。
数字が愛着を上回るのか、手元に置く喜びが上回るのか、その時点で選べばよいのです。
よくある質問
ブランドバッグは投資になりますか?
元本保証のある投資商品ではありません。
エルメスやゴヤールの一部には小売価格を上回る再販価値が見られますが、購入経路、売却手数料、為替、状態によって手取りは変わるため、「使って楽しみながら残価を保ちやすい消費財」と捉えるのが現実的です。
新品未使用でないと価値は残りませんか?
使用済みでも価値は残ります。
ただし、角擦れ、持ち手の黒ずみ、金具傷、内側の汚れ、におい、型崩れが重なるほど査定は下がるため、回数より傷み方を管理します。
黒やベージュを選べば間違いありませんか?
定番色は買い手の幅が広いものの、色だけで価値は決まりません。
人気モデルの需要が薄いサイズより、需要の厚いモデルの季節色が高く売れることもあるため、型、サイズ、色の順に中古相場を確認します。
箱や保存袋がなくても売れますか?
本体だけでも査定の対象にはなりますが、付属品が揃う方が次の買い手へ説明しやすく、保管状態の印象も整います。
箱、保存袋、レシート、カード、鍵、クロシェット、替えストラップはバッグごとに一組にし、別商品の付属品を混ぜずに保管します。
まとめ。ブランド名より、モデルと状態まで選ぶ
値落ちしにくさではエルメスとゴヤールが突出し、ザ・ロウ、シャネル、ルイ・ヴィトンが続きました。
ただし、ブランド平均より高く評価されるモデルも、平均を下回るモデルもあり、同じ型なら状態、サイズ、色、素材、付属品で差がつきます。
まずは手持ちのバッグを並べ、正式な型名、購入時期、付属品、最後に使った日を書き出してみてください。
使う、売る、受け継ぐ。
3つの行き先が見えれば、クローゼットはただの収納ではなく、自分で管理できる資産台帳に変わります。